アップライトピアノの
バットスプリングコードの修理の話。
グランドピアノは下から弦を打つ構造に
なっていますので
ハンマーは弦を打った後
その自重で速やかに
元の位置に戻ります。
ところがアップライトピアノは
横から弦を打つ構造になっているので
打弦したハンマーは
勝手には元に戻ってくれません。
なのでハンマーを素早く引き戻し
次の打鍵がなるべく早くできるように
スプリングがついています。
このスプリングを支えているのが
バットスプリングコードです。
20年以上経過したピアノでは
このコードが劣化して
切れてしまっているものがあります。
元々は真っ白なコードが
だんだん茶色に変色し劣化して
最終的には切れてしまうのです。
黄色矢印茶色に変色したコード
水色矢印スプリング
たくさん切れてしまっています。
ひとつふたつ切れているから
そこだけ修理すればよいという話
ではなく、1本切れるということは
コード自体が劣化しているため
次々全体に切れていってしまいます。
コードが切れると写真のように
スプリングがピョンと前に飛び出し
前にあるダンパーの部品に当たって
音が出なくなったり
連打が出来なくなったりします。
そのままさらに使い続けると
スプリングも曲がったり
最悪折れてしまいます。
弾いてても気が付かなかった位なので…
とおっしゃる方がおられますが
コードが切れた状態で弾き続けることは
ピアノの状態をどんどん悪化させます。
ピアノの部品で要らないものは
何一つありません。
ひとつひとつ総て必要な部品なのです。
コードが切れ始めていることに
気付かれたら速やかに
全鍵修理されるのがベストです。
切れたまま弾き続けるのは余計な修理を
増やすことになってしまいます。
ちなみにトリイの中古ピアノは
安心してお使いいただけるよう
もちろん修理済です。
修理後
先日調律ご依頼いただいたお客様。
娘も遠くに住むようになって
誰も弾いてないんだけど…
と、実に15年ぶり。
久しぶりに頼んでみようと思われたのは
気になる箇所がおありですか?
とお伺いすると…
「ちょっと前、調律師の本を読んで…
うちのピアノもほったらかしになってて
かわいそうだなぁと思って…いえ、
まだ映画〝羊と鋼の森”は
見ていないんですけどね。
ちょっと私が弾いてみようかしら」
とおっしゃいます。
そう思ってもらえたピアノは
きっと喜んでいますね。
調律調整をじっくり済ませたら
まだまだいい音のするピアノでした
そこに…愛は…あるなぁ…
信じられる愛は…ある